2021.03.01 / career-job-hunting

インタビュー後編:オンラインの就活の先に 未来を生き抜く力

 インタビュー後編:想像・妄想をクセづければ自分らしく働ける

前回の記事(コロナ禍の就職活動を成功させる必勝法とは?)に続き、今回も濱口桂先生からアドバイス。AIロボットがどんどん進化し、人間の仕事を奪われる!? なんて声もあるなか、どうすれば職を失うことなく働き続けられるか教えてもらいました。また副業OKの会社が増えている現状を見て、自分も副業を持った方がいいのか悩んでいる人もいるかもしれません。就職したちょっと先を見据えたお話を聞いていきましょう。

Co-en代表 濵口 桂さん × ライター 西倫世さん

西ちゃん
将来を考えたとき、AIとの共存するために何をすべきか考えてしまいます。AIに負けないために選ぶべき業種や職種はありますか?

はまぐちさん
大切なのはAIが得意なことを自分の得意にしないこと。AIが得意なのは抜群の暗記力。知識量はかなわない。もう1つは過去の事例からのパターンの解決です。逆にAIは問いかけがないと何もできません。

西ちゃん
では私たちに必要なスキルは?

はまぐちさん
想像力と創出力です。問題を解決する方ではなく、何ができるかの問いをつくるんです。人間が現状の問題点を見つけ、AIが過去の事例から答えをいくつか導きだし、そのなかから人間が適した案を選ぶんです。AIは敵でもないし、仕事を奪われる存在でもない。いろんな仕事をAIと人間が組んでやるようになると思います。

西ちゃん
でも学校のテストは習った内容の暗記とパターン解きが大部分ですよね。そこが敵わないAIと仲良くできるか不安です。

はまぐちさん
そんなことありません。たとえば某高級車メーカー。これまで車は工場の流れ作業で作っていたのでどんどん無人化が進むと考えられていましたが、趣味嗜好の多様化によりまったく同じ車を大量につくることが減ってきました。ロボットは決められた動きはできるけど臨機応変な対応は苦手。車体のカラーやタイヤに取り付けるボルトのサイズ、位置、数などが変わると対応に時間がかかるし、細かく対応できるロボットをつくるには高額なコストがかかります。そこで今はロボットが重たいものを運び、人間が細かい作業をするなど分担しながら車をつくっているんです。

西ちゃん
徐々にAIが怖くなくなってきました。

はまぐちさん
某コンビニでは商品の陳列業務ができるロボットの導入をはじめました。遠隔操作が可能なので、本社にいながら1人で地方の複数の店舗の商品の陳列ができるんです。

西ちゃん
先ほどAIは瞬時の判断が苦手という話がありましたが、コンビニにはいろんな固さ、サイズの商品がありますよね。陳列ロボットは対応できるんですか?

はまぐちさん
操作する人間が見て判断します。アバターロボットといって人間が動くとその通りにロボットが動くんですよ。つまり人間の脳とロボットの力の合わせ技。

西ちゃん
なるほど。ではAIにはない想像力や創出力を養う方法はどんなものがありますか?

はまぐちさん
ふだんから妄想することですね。たとえば「りんごかもしれない」という絵本があります。りんごを見て、そこからどれだけ想像できるかが大事。りんごを見て「これはりんごです」とただの事実をいう人より、「もしかしたら○○という名前かもしれない」「りんごではなく金属かもしれない」など妄想を膨らませられる人の方がいい。

西ちゃん
就職活動の場面でも想像力っていかされますか?

はまぐちさん
採用試験のグループワークでも「新しいビジネスの形」がテーマに上がることって多いと思います。そのとき賢い人ほど過去の事例のなかから答えをみつけてくる。でもそれだと新しくはない。過去の事例を知らない人だと現実的に可能か不可能かは関係なくとんでもない答えを導き出したりする。企業が求める人材って実は後者なんです。

西ちゃん
たしかに過去の事例ならAIの方が正確に覚えていますもんね。

はまぐちさん
想像力がないと、新しいビジネスは生み出せませんから。

西ちゃん
そうなると、やっぱり読書が必要ですか?

はまぐちさん
そこまでしなくても普段からいくらでも妄想はできますよ。たとえば部屋をみまわすとたいてい時計があるでしょう。「時計ってなんで右回りなんだろう?」「左回りの時計をつくってみたらどうなるかな?」って考えるのもいい。そういうクセづけをしてみてください。

西ちゃん
最近は副業OKの企業が増えてきました。副業をするメリットとデメリットってなんでしょうか?

はまぐちさん
メリットはリスク分散。一生懸命働いていても会社が倒産したり、リストラされたり、いろんな可能性があるけど、副業をしていればカバーできる。もうひとつはやりたいことができる。ライスワークとライフワークという言葉がある通り、食べていくために必要な仕事と、やりたい仕事、両方があると生活も精神的にも安定しますよね。

西ちゃん
テレワークが増えている今、副業ははじめやすいのかもしれません。

はまぐちさん
実際に会社員をしながら空いた時間に配達などのアルバイトをしている人も多いそうですよ。家でパソコンに向かって仕事をして、外に出てデリバリーする。気分転換にもなるし、運動不足も解消されます。

西ちゃん
そのぶん切り替えができる人じゃないといけませんね。

はまぐちさん
それはありますね。副業をするなら時間を管理する力がぜったいに必要。それから仕事を同時進行できる器用さも大事です。

西ちゃん
自分の得手不得手を見極めないといけませんね。

はまぐちさん
そう。最近よく聞く「ジョブ型」の話につながる。自分の得意をたくさんつくればシングルタスクではなくマルチタスクで働けます。かといって全員に副業をおすすめしているわけではありません。複数の業務を同時進行するのが苦手なら、職人さんのようにひとつの技術を磨き上げていけばいい。基本的に仕事はひとりではなくチームで動くので、自分ができないことはできる人が同じチームにいれば問題ありません。

西ちゃん
働き方の選択肢が増えましたね。

はまぐちさん
なにが正解かではなく、自己分析をして自分のやりたいことを見つけて、そのためにはどの働き方が自分に向いているかを考えてみてくださいね。

◆紹介された本について 『りんごかもしれない』著:ヨシタケシンスケ   出版社: ブロンズ新社 1,540円

この記事を書いた人

西  倫世
フリーランスのライター。学生時代、アルバイト情報誌の編集部で学生スタッフとして雑誌づくりに携わり、大学卒業後は編集プロダクションに勤務。転職情報誌の編集・ライターとして経験を積み28歳で独立。現在は就職サイトにて記事を作成するほか、飲食業界誌、企業広報誌、テレビ誌などあらゆる媒体で、さまざまな職業の人物インタビューを行っている。