課題図書⑬with you(ウィズ・ユー)
☆『with you(ウィズ・ユー)』はこんな人におススメ☆
ヤングケアラーについて知りたい / 家族の介護やお世話をしている / さわやかな恋愛物語が好き
最近よく耳にする「ヤングケアラー」。
病気や障害など、ケアを必要とする家族がいて、本来は大人が担うような家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どもをさします。
学校に行く時間が減ってしまったり、心理的な負担が大きすぎるといった問題が指摘され始めています。
この物語の主人公・悠人は中学三年生。
父親は家族を置いて家を出て、優秀な兄・直人、兄と比べたり子どもに大きな期待をかけたりする母親との三人暮らし。高校受験を控えて自分の存在意義を見出せない悠人は、日課にしていたランニングの途中、夜の公園でブランコに座る少女・朱音と出会います。
同い年の朱音はどこか表情に影があります。
朱音は“ヤングケアラー”で、くも膜下出血でたおれた母親の介護と幼い妹の世話、料理や洗濯といった家事をひとりで背負っていました。最初は協力してくれていた祖母も事情で田舎へ戻ってしまい、朱音はたった一人で家族を支えることになります。
表紙カバー裏にある「わたしは、いなくなんて、なれないんだ。わたしがいなかったら、うちが、こわれちゃうから。」という言葉が胸につきささります。
私立中学をやめて転校し、続けていたテニスもやめることになった朱音。多感な時期だけに、学校の友達にも先生にも打ち明けることができず、同い年の友人とは見ている景色が違うといいます。
悠人は朱音に恋をして、彼女の力になりたいと考えます。「誰かを大切に思うこと」で、二人が成長していくまっすぐな物語です。
大きな病気をしても長期入院がむずかしく、また核家族化が進んだ現代。
「ヤングケアラー」という言葉をもっとたくさんの人が知って、子ども同士でもそんな話ができたり、NPOや行政などの支援体制が整っていくことを強く願います。