若者の眠れる意識が目覚めて、世界の未来を切り開く
『ディープテック』 著:丸幸弘+尾原和啓
(出版社:日経BP 1,960円)
題名の〝ディープテック〟。
最近はやりの〝○○テック〟の一種でだろうか?
既存のビジネスに新たなテクノロジーが結びつくことで、今までに存在しないまったく新しい価値や仕組みが生まれる……これが〝○○テック〟という言葉で表されるようになった。
「Finance(金融)」と「Technology」で〝フィンテック〟。「モバイル決済」「ビットコイン」「ブロックチェーン」などにより、これまでの金融システムを革新する様々なサービスが出現している。
「Education(教育)」と「Technology」で〝江戸テック〟。「e-Learning」などのインターネットを活用した学習ツールや「電子黒板」などにより教育のやり方やあり方が変化している。
「Agriculture(農業)」と「Technology」で〝アグリテック〟。農業IOTや農機の自動運転化、ドローンの活用などによって農家の人手不足の解決が図られている。
こうしてみていくと、この本の題名である『ディープテック』は、今までの「○○テック」とはちょっと異なる概念となっている。
何か特定の業界やビジネスを指しておらず、「ディープ」という、とても曖昧な言葉を使っているののだ。
この本を読み進めていくと、この「ディープ」の意味が少しずつ理解できてくる。
ディープ……深い、つまり〝根深い課題〟(「ディープイシュー」)をテクノロジーの力で解決して考え方のことのようだ。
さらにこの本を読み進めていくと……いや、そんな単純な話ではないということがわかってくる。
まさに〝ディープ〟の意味はかなり根深い概念を包含しているようだ。
同じくいま世界中を席巻している社会的キーワードである〝SDGs〟の次の潮流となるかもしれない。
この本に掲載されている、国内外の〝ディープテック〟のビジネス事例を見ていると、この考え方が地球を救うのではないか、とさえ思えてくる。
まだビジネス経験の少ない学生には、1~2章の内容は少し難しいかもしれない。読んでいてしんどくなったら、ぜひ4章の日本の『ディープテック』企業の事例から読んで欲しい。かならず、これらの企業が起こす未来の産業にワクワクするハズだ‼!
そのワクワクが、いまだ解決されていない社会的課題の存在に気づき、その根深い課題に対して複数の異なるテクノロジーを掛け合わせることでその解を探し出すというムーブメントを起こしていく。
それこそが『ディープテック』の本質、若者の眠れる意識が目覚めて根深い社会的課題を解決に導き、世界の未来を切り開く、なのかもしれませんね。