パフォーマーとしての生き方<その1>サーカス教室ってどんなところ?
サーカスをみたことがありますか? 空中ブランコにのって宙を舞ったり、1人で何本ものフラフープをまわしたり、人間離れしたスゴ技を披露するサーカスの団員たちを見て、自分にもできるかな? と想像してドキドキワクワクしたことがある人もいると思います。今回は大阪・弁天町でサーカススクール「いくらサーカス」を主宰し、自身もパフォーマーとして活躍する谷川育子さんに、どんな想いでサーカススクールを立ち上げたのか伺いました。
いくらサーカス 谷川育子さん × ライター 西倫世さん
サーカスのワザが学べるスクールがあるなんて、知りませんでした。まずはサーカススクール「いくらサーカス」について教えてください。
サーカスでよく見かける空中演技が学べます。天井から吊るした布を使って行うエアリアルティシュー、空中ブランコなど、ロープやリング、ハンモックを使う空中演技もあります。
エアリアルティシューは、シルクドソレイユのショーでやっているイメージです。
もちろん空中演技だけでなく、アクロバットをしながらフープの中をくぐり抜けたり、ジャグリングをしたり、地上演技も学べますし、映画やヒーローショーなどで見かけるスタントアクションを習得するレッスンもあります。
キッズサーカス、親子サーカス、おばちゃんサーカスといろんなレッスンがあるので、生徒さんは3歳~70代と幅広いですよ。
70代!それはびっくりです。サーカススクールは日本ではなかなか聞かないですが、海外にはこういったスクールはあるんですか?
谷川さん自身は、サーカスでやるような演技のスキルをどこで学んだんですか?
私はオーストラリアのメルボルンにある国立サーカス大学NICAに行きました。解剖学など体にまつわる座学のほか、毎日6時間以上トレーニングもしていました。
本格的ですね! 受験資格などはありましたか?
大学を卒業したらどうしたいかを語る、夢スピーチの審査もありました。私は「みんながハッピーになれる場所としてサーカススクールをつくりたい」という想いを伝えたら合格できました。
どんな経験があればサーカス学校に合格できるんでしょう?
人によって違いますね。空手やカンフーが得意な人、バレリーナ、小さい頃からサーカスをやっていた人、器械体操や新体操の選手もいました。運動が好き、人を笑わせるのが好き、人前に出るのが好きな人が多かったです。
私の場合は、小さい頃に少しやっていた器械体操と、インドネシアで空中ブランコを飛んでいた経験が、合格につながったと思います。
その学校を卒業してすぐ「いくらサーカス」を作ったんですか?
いいえ。サーカス学校在学中に、メルボルンでたまたま大阪にある大きなテーマパークのショーに出るパフォーマーのオーディションがあったので受けたら受かったんです。学校卒業と同時に帰国してテーマパークの寮に入り、3年ほど働いていました。
では何をきっかけにスクールを起ち上げたんですか?
インドネシアで空中ブランコを教えていた時、日本人のお客さんが子供みたいな笑顔でとても楽しそうにサーカスをやっているのを見て「いつか日本に、みんなが笑顔になれる場所を作ろう!」と思ったのがきっかけです。
テーマパークで働きながら、サーカススクールを作るためにはどうすればいいか経営面の勉強もしていました。職場仲間からエアリアルティシューを教えて欲しいと言われることも増え、ちょうど資金も貯まっていたので、そこで念願のスクールをつくる決意をしました。
「いくらサーカス」は谷川さん以外にも先生はいるんですか?
現在(2019年12月)は8名います。
スクールで講師をするだけでなく、パフォーマーとしてテーマパークやイベントのショーに出ることもあるんですよね。
娘が生まれてから、私が出演することは少なくなりました。パフォーマー仲間にショーに行ってもらうことが多いです。時には私も一緒にチームを組んで出演することもあります。脚本を書いたり、音楽を編集したり、イメージにあった衣装をデザインすることもありますよ。
パフォーマー方はみんな運動神経がいいんでしょうね。
アクロバットや空中演技をする人は運動が得意な人が多いです。運動が得意でない人でも、ジャグリングやマジックなど、ほかのジャンルで才能を発揮する人もいます。私は北海道の苫小牧生まれでまわりに自然がいっぱい。木のツルをつかんでターザンごっこをしていました。
その頃から今につながる何かを感じますね。
好きな教科は体育と音楽と図工でしたね。パフォーマンスに音楽は付きものだし衣装や舞台のデザインも考えているので、好きだった教科がぜんぶ今につながっていると感じています。これまでいろんな職業についたり、自分がやってみたいことを試してきましたが、最終的には小さい頃から変わらず好きなものに関わる仕事に辿りついた感じです。
谷川さんのインタビューの後半では、これまでのチャレンジの道のりを振り返ってもらいました。あらゆる葛藤を経て、キラキラした自分に出会えた谷川さんだからこそ伝えられる言葉は、将来の夢を探し求めている世代には特に刺さるはず。ぜひ合わせてお読みください。
◆<その2>どうやったらパフォーマーになれるの? の記事はこちら