2019.12.31 / interview

パフォーマーとしての生き方<その2>どうやったらパフォーマーになれるの?

前回の記事(〈その1〉サーカス教室ってどんなところ?では、谷川育子さんが主宰するサーカススクール「いくらサーカス」についてお話を伺いましたが、今回は谷川さん自身がパフォーマーになるまでの経緯をじっくり聞きました。大学生のときNHKのエアロビ番組に出演し、その後いろんな仕事に就きながら海外を飛び回り、挫折と挑戦を繰り返して手に入れて今の生活を手に入れた谷川さん。その半生で体感した、自分らしく生きるコツを教えてもらいます。

いくらサーカス 谷川育子さん × ライター 西倫世さん

 

 

西ちゃん

小さい頃から運動は得意だったんですか?

イッコさん

体育は好きでしたね。体を動かすのも好きで北海道・苫小牧の森の中を走り回る、野生児みたいな子どもでした。

西ちゃん

でも大学ではフランス語を学んでいるんですよね。

イッコさん

実は受験の頃、自分が将来何になりたいか明確ではなく悩んでいたんです。獨協大学のフランス語学科は指定校推薦で受験できたので入学しました。

西ちゃん

なんでフランス語だったんですか?

イッコさん

小さい頃、国籍の違う裕福な子どもと貧しい子どもが出てくる絵本を読んだんです。みんなで手をつないでいる絵に「彼らはともだち」という言葉が添えられていたのがすごく印象的で。

イッコさん
そこにアフリカの木も描かれていたから、発展途上国の子どもたちに自分が何かできるかと考えるようになりました。フランス語が話せれば、フランスの植民地だったアフリカの子どもを助けることにつながるかもと思ったんです。

西ちゃん

素敵なモチベーションですね。

イッコさん

でもそれは自分が納得するために作ったこじつけみたいなもの。大学在学中もこのままでいいのか悩んで悶々としていました。体育大学に行きたい想いもあったし、まずは体を動かそうとエアロビのインストラクターの資格を取ったんです。学生をしながらフィットネスでエアロビを教えていました。

西ちゃん

最初はエアロビのインストラクターさんだったんですね。

イッコさん

大学卒業後もエアロビの仕事をしていたのですが、失恋など(笑)いろんな出来事があったとき、ふと私はアフリカの子どもを助けたいと思っていたはずなのに、どうして今、東京の裕福な奥様相手にエアロビを教えているんだろうとどんどん落ち込んで。一度故郷の北海道に帰ったんです。

イッコさん

家に閉じこもっていた私を弟が野鳥観察をしようと森に連れ出してくれて。鳥の向こうに青空が見えたとき、自分がずっと下を向いていたことに気づきました。翌日夢にヨガという言葉が出てきたので、アメリカのサンフランシスコにヨガの資格を取りに行きました。

西ちゃん

すごい行動力ですね!

イッコさん

その後はフランス系外資のリゾート施設「クラブメット石垣島」でフィットネスやヨガを教えて、その後はインドでヨガの修行をしたりもしました。

西ちゃん

前回のインタビューで、サーカス学校を受験するとき「みんながハッピーになれる場所としてサーカススクールをつくりたい」とスピーチしたとのことでしたが、そう思うようになったきっかけは?

イッコさん
インドのヨガリトリートのオーナーが「僕はビジネスを立ち上げて、みんなが幸せで笑顔になる場所をつくるのが生きがいなんだ」って言っていたんです。それを聞いて、自分もそんな生き方ができたらどれだけ素敵なんだろうって。それまでどこかに勤めることしか考えてなかったけど、自分でビジネスをはじめればいいんだと、目の前が開けた感じでした。

西ちゃん

なるほど。谷川さんにとって人が幸せになれる場所がサーカススクールだったんですね。

イッコさん

「クラブメット」で働いていたとき、たくさんのアクティビティがあるなか日本人はみんなすごく空中ブランコが好きだったんです。大人が子どもみたいな笑顔になっていたので、これだ!と思いました。

西ちゃん

今、学校の必修科目にダンスがありますよね。きっと谷川さんのようにパフォーマー、ダンサーとして働きたいと思っている子も増えたように思うのですがパフォーマーになるにはどうしたらいいんですか?

イッコさん

大きなテーマパークやサーカス団は定期的にパフォーマーのオーディションをしています。ホームページをこまめにチェックしてみると、オーディションの項目でどんなスキルや専門性が必要かわかるので、そのための練習や勉強をして準備をすると良いと思います。テーマパークダンスの専門学校もありますよ。

西ちゃん

でもなりたい人が多いということは狭き門ってことになりますよね。

イッコさん

そうかもしれません。ただ大阪にはカジノができるかもしれないという計画もありますし、需要が増える可能性もあると思います。

西ちゃん

パフォーマーを目指す学生に向けて何かアドバイスをするとすれば?

イッコさん

自分が毎日をキラキラ楽しく過ごすことが大切だと思いますね。パフォーマーは、お客さんに夢や希望を与える仕事です。みんなに笑顔を届けるためには、自分が最高の笑顔をしていることが一番!

イッコさん
最高の笑顔は、本当に楽しいときに出てきますよね! 元気に挨拶をして、友達に優しくして、つらいことがあっても笑顔で乗り切って、小さな幸せをいっぱい探して……そんな風に、毎日ワクワク過ごすことがパフォーマーへの第一歩です。チームで協力してショーを作りあげたりと「協調性」も大切ですね。

西ちゃん

谷川さんは英語やフランス語を話せますが、そういった部分も武器にはなりますか?

イッコさん
そうですね。私は海外にもたくさん知り合いがいるので、本来日本に入ってくるのは数年後になるであろう世界の最先端のトレンド情報も耳に入ってきます。日本だけをターゲットにしていると世界が狭くなるので英語はできる限り身に着けてほしいですね。

イッコさん
海外のオーディションは英語で行われることが多いので、海外で働きたい人は英語は必須です。通訳さんがいるところもありますが、小さなカンパニーにはいないので、オーディション情報を探す時点から英語力が必要です。パフォーマーとしてではなくても、語学ができると、とっても有利です。

西ちゃん

かつての谷川さんのように、どんな仕事につけばいいかわからない人はどうすればいいでしょうか?

イッコさん

自分の長所を見つけてとことん磨くこと。何もかも平均的にうまくできるようにならなくていいんですよ。「やってみたいな」「興味があるな」ということに、どんどんチャレンジしてみてください。体験してみて初めて「これが天職だ!」と思うこともあるし、思っていたより面白くなかった、ということもわかります。人に言われた人生ではなく、自分の人生の主人公になって、最高の人生のストーリーを描いていってくださいね。

西ちゃん

最後に、谷川さん自身が日々心掛けていることを教えてください。

イッコさん

「ありがとう」って気持ちを大事にしています。自分も幸せだけど、まわりにも幸せになってほしい。小さい頃に読んだ絵本に出てきた「ともだち」っていうキーワードは常に私の心の中にあります。

前編の記事はこちら

 

~~もっと詳しく知りたい方はこちらも~~

いくらサーカスホームページ

【プロフィール】

いくらサーカス代表 谷川育子さん

獨協大学外国語学部仏語学科でフランス語を学びながらフィットネスのインストラクターの資格を取り、その後ヨガも習得。インドネシアでヨガ講師として働いていた頃、サーカスに出演し、本格的に学ぶためオーストラリア国立サーカス大学にてサーカスアーツ学位取得。帰国後テーマパークでパフォーマーとして活躍後、2015年「いくらサーカス」を起ち上げた。

この記事を書いた人

西  倫世
フリーランスのライター。学生時代、アルバイト情報誌の編集部で学生スタッフとして雑誌づくりに携わり、大学卒業後は編集プロダクションに勤務。転職情報誌の編集・ライターとして経験を積み28歳で独立。現在は就職サイトにて記事を作成するほか、飲食業界誌、企業広報誌、テレビ誌などあらゆる媒体で、さまざまな職業の人物インタビューを行っている。