2020.07.03 / newseventsbook

課題図書②月と珊瑚

読書感想文コンクールにチャレンジするぞというみんなへ。今年も課題図書について紹介します。

☆『月と珊瑚』はこんな人におススメ☆

沖縄が好き / 沖縄の問題に関心がある / 勉強を頑張ってみようと思い始めた / 沖縄文化をもっと知りたい / 漢字が苦手

 

沖縄で暮らすとしたら……。どんな生活を思い描きますか?

透明度バツグンの青い海で泳いで、まぶしい太陽の下を走り回るようなイメージでしょうか?

この本の主人公・珊瑚は小学校6年生。沖縄で、民謡歌手のおばあと暮らしています。

珊瑚は、ひらがなばかりの作文を東京から来た同級生・詩音にばかにされ、勉強が苦手なことを恥ずかしいと感じ始めます。

「わたしは、六ねんせいになったので、べんきょうをがんばります。」と決心し、まず漢字を書けるようにしようと、日記を書き始めます。

珊瑚の日記には、やさしい妖精・キジムナーのような親友と過ごす日々、そして『ベルサイユのばら』のオスカルのような転校生・月(ルナ)への憧れなど、心があたたかくなったり、ドキドキときめく日常が綴られています。

一方、セレブしか住めないと言われるタワーマンションで暮らすルナの暮らしを知った珊瑚は驚きます。スマホもなくて子ども食堂にこっそりと食べに行く、そんな貧しい自分を恥ずかしく感じ始め、おばあを傷つけてしまう場面もあります。

学校の上空では戦闘機の音が響き、窓ガラスは「ビリビリ」と音を立てます。音だけでなんの戦闘機かわかってしまう明るい亮。一方、詩音は耳をつんざくような轟音が聞こえると耳をふさいで動けなくなってしまいます。友達のひいばあちゃんは、辺野古の埋め立て問題に反対して座り込みをしています。

物語の後半では、エイサーを格好よく踊るおばあの過去、沖縄に転校してきたルナの事情なども珊瑚は知ることになります。

米軍基地問題や子どもの貧困、学力の差、過去の戦争、慰霊の日のことなど、沖縄の日々がリアルに描かれているのですが、読んでいてつらいという印象はなく、一人ひとりが自身の境遇の中で、必死で「今」を明るく生き抜いていく強さ、やさしさなどが胸に響いてきます。

ラスト、珊瑚と友人が、ガジュマル公園で将来の夢を語り合う場面は希望にあふれていてまぶしく感じられます。「二十歳の夢」――あなたの夢は何ですか?

◆本について 『月と珊瑚』 著:上條 さなえ 出版社: 講談社 1,540円

この記事を書いた人

あすとれ編集部
編集長・春瀬(編集・ライター兼キャリアカウンセラー)と、ライターさん、就労前世代のモニターバイトさんから成る編集部です。拠点は大阪市内。「こんな記事が読みたい」などリクエスト募集中!