原爆とはなんだったのか? 課題図書①ある晴れた夏の朝
~読書感想文サポート連載①「ある晴れた夏の朝」~
読書感想文コンクールに今年もチャレンジするぞという中学生のみんなへ。課題図書について紹介します。
みなさんはディベートをやったことがありますか? アメリカでは自分の本音とは関係なく、賛成派・反対派のグループに分かれて意見を戦わせる機会が多くあります。
今回紹介する本の舞台はアメリカ。「広島・長崎への原爆投下の是非」をテーマに、8人の高校生が肯定派・否定派に分かれて討論します。登場する8人のルーツが興味深いのです。
最初のページに、8人それぞれの人物について紹介されています。主人公メイは、日本人女性を母に持つアメリカ人。そして日系アメリカ人のケン、アイルランド系のノーマン、ユダヤ系のナオミなど。
ルーツ、育った環境、自身や両親の経てきた体験が違うと物事・歴史的事実に対する捉え方もも異なってきます。
広島への原爆投下の是非から、「南京虐殺」「真珠湾攻撃」「ナチス・ドイツ」「黒人差別」様々な問題が、そして8人それぞれの抱く「日本人像」が浮かびあがってきます。
本の中で、8人の登場人物たちは手元の教科書や図書館の本などでたくさんの「事実」を調べています。まず調べ、自分と反対派のメンバーはどんな意見を述べるだろうかと想像し、会場のお客さんたちの心をつかむにはどんなスピーチが効果的か、戦略を練ります。
8人の意見には明快な論理もあれば、感情の揺れもあり、心に響く言葉が多くみられました。ページを次々とめくってしまいます。自分がディベート会場の客になったかのように感動したり、驚いたり、憤ったり。
書籍も終盤に近付くと、反対派・肯定派のどちらが勝利するのか驚きの展開が見えてきます。反戦をテーマにした児童文学は、刊行国の立場で描かれることが多いのですが、この物語は日本人作家による、アメリカ側の視点で描かれた物語です。どちらが、どんな理由で勝利したかと思いますか? 楽しみにページをめくってみてください。
帯には「あなたが、9人目の登場人物」とあります。あなたならどの立場でどんな意見を述べるでしょうか? ぜひ考えてみてください。
◆本について 『ある晴れた夏の朝』 著:小手鞠 るい 出版社: 偕成社 1512円