2018.08.04 / newseventsbook

読書感想文サポート連載⑤

『太陽と月の大地』コンチャ・ロペス=ナルバエス 訳:宇野和美 価格:1600円(税別)

書感想文にチャレンジする時、「早く読めそう」と、ページ数が少ない本・イラストや写真が多い本を選んでしまったりしませんか?

もし興味のないジャンルを選んでしまうと、読書タイムがとても苦痛になります。というわけで、今回の課題図書を順番に紹介します。本選びの参考にしてくださいね。

◆「太陽と月の大地」はこんな本

スペインで読み継がれてきた児童文学の名作が訳されました。

舞台はスペイン南部、16世紀のグラナダ。

先祖代々の土地を耕して生きてきたモリスコ(キリスト教に改宗したイスラム教徒)のエルナンド一家は、近くの城の城主であるキリスト教徒の伯爵家と親子の代にわたり、友情関係で結ばれていました。

けれど、時代が流れ、モリスコ達におふれが出されます。

おふれは作品でこう書かれています。

「何もかも禁止だって。ぼくらの服装も風呂も、しきたりも祭りも。アラビア語をしゃべるな……」禁止事項はまだまだ続きます。

信じてきたものを何もかも否定され、禁止されたらどうやって暮らしていけばいいのでしょうか。怒りや嘆きが戦争につながり、友情や信頼が失われていきます。

農夫の息子エルナンドと伯爵の娘マリアの悲恋、エルナンドの兄・ミゲルの逃亡劇を中心に描かれるこの歴史小説。銅版画の挿絵も、16世紀の世界観をかもしだしています。

宗教や民族の対立から戦争が起こり、大切なものが失われていくということは、16世紀だけでなく、現代も世界で起きていること。

現代日本の社会では想像しづらいかもしれませんが、異なる宗教を信じる人たちの間の溝が浮き彫りになった本です。

宗教問題や世界史に興味ある人に特におすすめ。

『太陽と月の大地』コンチャ・ロペス=ナルバエス 訳:宇野和美

この記事を書いた人

あすとれ編集部
編集長・春瀬(編集・ライター兼キャリアカウンセラー)と、ライターさん、就労前世代のモニターバイトさんから成る編集部です。拠点は大阪市内。「こんな記事が読みたい」などリクエスト募集中!