2018.08.02 / newseventsbook

読書感想文サポート連載②

『一〇五度』著者:佐藤まどか(あすなろ書房) 価格:1400円(税別)

読書感想文にチャレンジする時、「早く読めそう」と、ページ数が少ない本・イラストや写真が多い本を選んでしまったりしませんか?

もし興味のないジャンルを選んでしまうと、読書タイムがとても苦痛になります。というわけで、今回の課題図書を順番に紹介します。本選びの参考にしてくださいね。

◆「一〇五度」はこんな本

「皆さんはもうやりたいことを見つけましたか」とあとがきにあります。

この本の主人公は15歳・男子。祖父の影響で椅子マニアです。

転校した先の学校で 同級生の女の子と趣味が合い、まだ中学生ながらも二人で椅子のデザインコンペにチャレンジすることになります。

両親・祖父・弟と暮らす主人公には不満がひとつ。体が弱い弟の分まで自分に期待が集中していること。

応援してくれる祖父に対して、進路に父が反対してくることへの葛藤もありますが、コンペに挑戦していく中でパートナーと支え合い、自分の中の解決策・落としどころを自身で気づいて成長していきます。

この本の著者、イタリアでプロダクトデザイナーとして活躍する方だけあって、コンペに出すデザインのくだりや製造工程など、詳しく描かれています。椅子の歴史や商品としての話や製造工程、実際にクリエイターとして働いていく中での大変さなどもリアルに描かれています。

「自分も椅子が好きだなぁ」とか、建築や工学デザインなどが好きな子が読むと、特に面白いんじゃないかなと思います。

「やりたいこと」については、作者はあとがきで「好きだから辛くても耐えられるし諦めないで続けられる」と書いています。一方で作品の中で父親は主人公に「一番好きなことを仕事にしちゃいかん。逃げ場がなくなる。趣味でやればいいじゃないか。それなら楽しいぞ」と言っています。

進路・就職を考える時、こんな悩みにぶち当たる人も多いかと思いますが、大人二人のコメントはきっとどちらも正解で、時にどちらも不正解な気がします。後悔しない正解は人それぞれ。自分がしっかり向き合って選び取った方なのでしょうね。

最後に、タイトルの「一〇五度」。これ、何だろう? って思った人も多いんじゃないでしょうか。本の帯に「イスの背もたれの角度は105度。それは、人と人が寄りかかりあう奇跡の角度!」とあります。ちょっとだけ寄りかかりあう、支え合う角度がお互いにちょうどいい。もたれかかりすぎると、相手がしんどくなる。

主人公は、イスづくりのパートーナー、そして家族と「支え合うちょうどいい角度」を見つけていくのです。主人公のチャレンジ・日常の葛藤を通じて、読者も気づきをたくさん得られる本だと思います。

『一〇五度』佐藤まどか著

この記事を書いた人

あすとれ編集部
編集長・春瀬(編集・ライター兼キャリアカウンセラー)と、ライターさん、就労前世代のモニターバイトさんから成る編集部です。拠点は大阪市内。「こんな記事が読みたい」などリクエスト募集中!