読書感想文サポート連載⑥
『わたしがいどんだ戦い1939年』キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー 訳:大作道子 価格:1600円(税別)
読書感想文にチャレンジする時、「早く読めそう」と、ページ数が少ない本・イラストや写真が多い本を選んでしまったりしませんか?
もし興味のないジャンルを選んでしまうと、読書タイムがとても苦痛になります。というわけで、今回の課題図書を順番に紹介します。本選びの参考にしてくださいね。
◆「わたしがいどんだ戦い1939年」はこんな本
舞台は1939年のイギリス。第二次世界大戦を背景に、主人公の少女エイダが自分を取り戻して生きていくため、戦っていく様子がとても丁寧な心理描写で描かれています。
エイダは生まれつき右足が不自由で、10歳まで母親にアパートに閉じ込められていました。母親が虐待していたのです。
けれど、戦争による学童疎開を利用して「外に出るチャンス」と歩く練習をし、弟と逃げ出していきます。
ひどい母親の存在、不自由な右足、戦争の影響などつらい現実がたくさん描かれているのですが、疎開先のスーザンはじめ、村の人達とのあたたかなふれあいも描かれています。ポニーに乗ったりと、新しいことにも次々とチャレンジしていく中、エイダの世界は広がり、自信もついてきます。「読み方を教えてくれませんか」と自分から申し出るシーンもあり、エイダの意欲的な姿勢が印象に残ります。
戦争については、現代の日本で中学校・高校に通っていると想像もつかないと思いますが、本の中では「戦争に関する政府からのお知らせ」がエイダ達のもとにも次々と送られてきます。例えば、ガスマスクを持ち歩く理由とその取り付け方、暗闇で自動車にひかれないための対策など。リアルに状況が浮かび上がり、戦争についても考えさせられます。
もしもあなたが理不尽な環境、けがや病気などで悩んでいたり、困っていたりしたら、エイダの戦いぶりから勇気がもらえるのではないかと思います。「人間ってこんなに強いんだな」「人ってあたたかいんだな」そんなことも感じられる一冊です。
『わたしがいどんだ戦い1939年』キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー 訳:大作道子